九機よりなる編隊を、次々に連ねて、東京へ東京へと、爆音もの凄く進撃をつづけたのであった。
 わが防空監視船の警報は、あとからあとから防衛司令部へとどいた。
「爆撃機ハ九機ノ編隊七箇ヨリナル」
「爆撃編隊ハ高度約二千メートル、針路ハ真西ナリ」
「針路ヲ西南西ニ変ジタリ」
「只今上空ヲ通過中ナリ」
 こうしてS国の空襲隊の様子は、手にとるようにわかって来た。
 防衛司令部からの命令で、志津村と谷沢《たにざわ》村との防空飛行隊に属する戦闘機○○機は、すでに翼を揃《そろ》えて飛びだした。
 ところが敵空襲部隊は、本土にあともう百五十キロというところで、急に陣形を変えた。
 モロレフ司令官は、光線電話をもって、第一編隊長ワルトキンに、いそいで命令した。
「ワルトキンよ。貴隊は犬吠崎《いぬぼうさき》附近から陸上を東京に向かい、工業地帯たる向島《むこうじま》区、城東《じょうとう》区、本所《ほんじょ》区、深川《ふかがわ》区を空襲せよ。これがため一|瓩《キログラム》の焼夷弾約四十トンを撒布《さっぷ》すべし!」
「承知! 我等が司令! 直ちに行動を始めん」
 焼夷弾を積んだこの第一編隊は、本隊から離れると
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