にして両端をとめた。これなら爆弾のひびきでガラス窓がこわれ、そこから毒瓦斯が入ってくるという心配はない。
 その次は、畳をあげて、床板の隙間に眼張をはじめた。兄弟三人ともお習字の会に入っていたので、手習《てならい》につかった半紙の反古《ほご》がたくさんあったから、これに糊をつけて、二重三重に眼張をした。それができると、その上に新聞紙を五枚ずつおいて畳を敷いた。これで床下からくる瓦斯は防げる。
「こんどは窓框《まどわく》と窓の戸との隙間と、それから壁の襖《ふすま》の隙間に、紙をはるんだよ」
 洋間風にこしらえた部屋だったから、隙間はわりあいに少かった。
 扉が二つあったが、一つは諦めて眼張をした。一つの扉から出入りすることにして、その内側には毛布でカーテンをおろした。
 これは昨夜、汽車の中で鍛冶屋の大将のやったのを見習ったのだった。――これで、第一防毒室はできあがった。しかし、仕事はそれですんだのではなかった。
 こんどは、防毒室の前の部屋に、同じような眼張をした。これが前室だった。
「いいかね。外から入ってくるときは、この前室をとおって、それからもう一つ奥の防毒室に入るんだよ。つまり
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