すぐに新しい七十ミリの砲弾がつめかえられ、砲手はすばやく引金を引いた。砲弾は、ポンポンと矢つぎばやに高空で炸裂する。しかし敵機は憎らしいほど落ちついている。――そればかりか、機体の腹のところについていた縞《しま》が崩れて、なにか白いものがスーッと落ちてきた。
「あッ、やったぞ、爆弾投下だッ……」
 誰かが大声で叫んだ。
 白い爆弾の群は、斜に大きな曲線をえがいて落ちてくる。……一秒、二秒、三秒……。
 ヒューッ、ウウーンという不気味な唸音《うなりおと》をきいたかと思ったその瞬間、
 グワ、グワ、グワーン。
 ドドドドーン。
 ガン、ガン、ガン、ガン。
 目がくらむような大閃光《だいせんこう》とともに、大地が海のようにゆらいだ。ものすごい大爆発! まぢかもまぢか、聴音機の大ラッパがたちまちもげて火柱の間を縫《ぬ》うように吹きとんでゆく。それをチラリと見たが……。
「ウウーン。ば、万歳!」
 悲痛なさけびごえ。
 それにしても、ものすごい狙《ねらい》だ。わが部隊をぶっつぶそうとてか、破甲弾をなげおとしたのだった。
「……照準第一、あわてるなッ」
 どこからか、川村中隊長のさけぶ声が響いてき
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