方ニ見失エリ」――ああ、それではいよいよやって来るぞ。
おお、憎むべき空魔!
その空魔は、いまや刻一刻、わが海岸に近づきつつある。……
深夜の空襲
ピカリ――
と、暗黒の空に、真青な太い柱がとびあがった。
照空灯だ!
太い光の柱は、生物のようにぐうっと動きながら、夜の空をかきまわした。それにぶっちがいに、また地上から別の照空灯の光がサーッと閃《ひらめ》いた。どっちも、同じような場所を探している。――とたんに、いいあわしたように、光の柱はパーッと消えた。あたりは再び闇となった。しかし照空灯の強い光の帯だけが、いつまでもアリアリと眼の中に残っていた。どっちもかなり遠方で、方角からいうと、直江津よりもだいぶん東の方だ。海岸に陣地をしいている部隊が敵機を探しているのらしい。
川村中尉は、聴音機の上にとびのって、聴音手のそばにピッタリ身体をよせていた。さっきまで首をふっていた大きな聴音ラッパは、今は天の一角をさしてすこしも動かない。――ついに敵機の爆音をとらえたらしい。
ヒラリと中尉は地上にとび下りる。
ピリピリピリピリ。
注意せよ?――というしらせだ。
「……
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