か、いまに警察と憲兵隊との協力でわかるだろう。とにかくS国人に使われているやつさ」
「日本人だったら、僕は憤慨《ふんがい》するなあ。しかしS国というのは悪魔のようなことを平気でやる国ですね」
「これまでの戦争は、本国から遠く離れた戦場で、軍隊同士が戦うだけでよかった。しかしこれからの戦争は、軍隊も人民も、ともに戦闘員だ。そして戦場は、遠く離れた大陸や太平洋上だけにあるのではなく、君たちが住んでいる町も村も同じように戦場なんだ。だからあんなふうにスパイが細菌を撒いたり、それから又敵の飛行機が内地深く空襲してきたりする」
「すると僕も戦闘員なんですね」
「そうだとも。立派な戦闘員だ。非戦闘員はというと重い病人と、物心のつかない幼児《こども》と、足腰も立たないし、耳も、眼も駄目だという老人だけだ。七つの子供だって、サイレンの音がききわけられるなら、防護団の警報班を助けて『空襲空襲』と知らせる力がある。大戦争になると、在郷軍人も、ほとんど皆、出征してしまう。後にのこった人たちの任務は多いのだ。たとえば防空|監視哨《かんししょう》といって、敵の飛行機が飛んでくるのを発見して、それを早く防空監視隊
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