九機よりなる編隊を、次々に連ねて、東京へ東京へと、爆音もの凄く進撃をつづけたのであった。
 わが防空監視船の警報は、あとからあとから防衛司令部へとどいた。
「爆撃機ハ九機ノ編隊七箇ヨリナル」
「爆撃編隊ハ高度約二千メートル、針路ハ真西ナリ」
「針路ヲ西南西ニ変ジタリ」
「只今上空ヲ通過中ナリ」
 こうしてS国の空襲隊の様子は、手にとるようにわかって来た。
 防衛司令部からの命令で、志津村と谷沢《たにざわ》村との防空飛行隊に属する戦闘機○○機は、すでに翼を揃《そろ》えて飛びだした。
 ところが敵空襲部隊は、本土にあともう百五十キロというところで、急に陣形を変えた。
 モロレフ司令官は、光線電話をもって、第一編隊長ワルトキンに、いそいで命令した。
「ワルトキンよ。貴隊は犬吠崎《いぬぼうさき》附近から陸上を東京に向かい、工業地帯たる向島《むこうじま》区、城東《じょうとう》区、本所《ほんじょ》区、深川《ふかがわ》区を空襲せよ。これがため一|瓩《キログラム》の焼夷弾約四十トンを撒布《さっぷ》すべし!」
「承知! 我等が司令! 直ちに行動を始めん」
 焼夷弾を積んだこの第一編隊は、本隊から離れると、犬吠崎をめがけて驀進《ばくしん》していった。
「第二編隊長、ミルレニエフ」
「おう、われ等が司令。破甲弾の投下準備は既に完了しあり」
「貴官は東京湾上より北上して、まず品川駅を爆撃したる後、丸《まる》の内《うち》附近より上野駅附近にわたる間に存在する主要|官公衙《かんこうが》その他重要建造物を爆撃し、東京市東側地区の上空に進出すべし。但し、東京市上空に進入の時期は第一隊より五分後とす」
「承知」
 第二編隊は爆撃隊だった。
 すぐに機首を西南の方に廻して、本隊を離れていった。
「第三編隊長、ボロハン!」
「おう……」
 この編隊は、地雷弾と毒瓦斯弾とを半分ずつ持っている。
「貴隊は松戸《まつど》附近より、東京の北東部にでて、まず環状線道路及び新宿駅を爆撃破壊したる後、東京市北部及び西部の繁華なる市街地に対し瓦斯弾攻撃を行い、住民をして恐怖せしめ擾乱《じょうらん》を惹起《じゃっき》せしむべし!」
「承知!」
 第三編隊も、隊列を離れていった。第四編隊と第五編隊とは毒瓦斯と焼夷弾、第六編隊は地雷弾をもって、川崎《かわさき》横浜《よこはま》方面の爆撃を命ぜられた。毒瓦斯弾と細菌弾とを持った
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