子に穴があいちゃ、うっかりするとそっちへ吸いよせられるぞ」
博士はそれを考えゾッとした。
すると廊下をドンドンと歩いてくる足音が聞えてきた。お手伝いさんのメアリーだ。
彼女の足音は、部屋の前でパタリと停った。ガチャガチャと鍵を入れる音がする。やがて入口の扉《ドア》がスーッと明いた。そしてメアリーの怪訝《けげん》な顔が現れた。
とたんにサッと廊下から吹き込む一陣の風! 呀《あ》ッと思う間もなく、博士の身体は名犬の輪ぬけのように、硝子窓の破れ穴からスーッと外に抜けいでてしまった。
街路
瓦斯《ガス》体となった清家博士は、街路樹の葉から葉へともつれながら、警戒をつづけていた。
このあたりにフワついているところのこれも瓦斯体となった博士夫人の身体と混合することを、極度に恐れていた。もし、万一そんなことになると、彼は再びもとの身体にはかえれないであろう。
この心配の折から、向うの通りからガランガランとやかましくベルをならしながら、撒水自動車がやってきた。
それは最新式のもので、大きな水槽《みずおけ》の下から横むきに水を猛然と噴きだす式のものであった。
博士は街が涼
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