りまして急行列車の車輪とござい」
 釜はくるくると、目にもとまらぬ速さでまわりだした。観客は拍手大かっさいである。
「これこれ釜さん。ちょいと見物の衆に拍手のお礼をなされよ」
 雨谷がいうと、ものすごい速さでラセン回転をしていたあやしい釜は、ぴたりと舞台の中央に――おお、それは宙づりの形でもって、ぴたりととまり、おじぎをするように見えた。
 またもや見物席よりは拍手のあらしだ。
「ごあいさつすみましたれば、つぎは大呼びものの大空中乱舞《だいくうちゅうらんぶ》とござい。はーッ」
 口上《こうじょう》とともに、釜は舞台の上をはなれて、見物席の上へとんでいった。そこでひらりひらりと、まるでこうもり[#「こうもり」に傍点]のように飛びまわるのであった。見物人は、ほうほうとおどろきの声を発してあやしい釜のあとを目で追いかける。
「どうです、検事さん」
 蜂矢探偵は、長戸のそで[#「そで」に傍点]をひいた。
「うむ、じつに奇怪きわまる。どうしてあんな空中乱舞ができるのだろうか。あれが仕掛けによるにしても、それは非常にすぐれた仕掛けであるにそういない」
「ぼくはあれについて、三人の技術者と、二人の科
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