はとんぼの目玉のように光らせ、それから長い口ひげをぴんと上にはねさせ、あご[#「あご」に傍点]には三角形のあごひげ[#「あごひげ」に傍点]をはやして、どうやら西洋の悪魔の化身《けしん》のように見える。
手にはぴかぴか光る銀の棒を持って、二十世紀茶釜にしきりに気あいをかけている。
「いよいよ、これより千番に一番のかねあい、大呼び物の綱わたりとございまする」
美しい女助手が六人、ばらばらとあらわれ、舞台に高く綱をわたす。そのあいだ、問題の怪物は、台の上の、赤いふとん[#「ふとん」に傍点]の上にどっしりしり[#「しり」に傍点]をおちつけ、ごとごととからだをゆすぶっている。
綱は引きはられた。助手たちは、左右へぱっと、花が飛ぶようにわかれると、三角軒狐馬師《さんかくけんこまし》がしずしずと舞台の中央に立ちいでて、口上をのべる。
「いよいよもって、二十世紀茶釜の綱わたりとございまする。ところがこの綱わたりは、あっちにもある、こっちにもあるというかびくさい綱わたりとはちがい、すこぶる奇想天外《きそうてんがい》、大々奇抜《だいだいきばつ》なる綱わたりでございまする。それはじつに、ユークリッドの
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