いじけん》も、かんたんに答が出てしまうのですがねえ。どうです検事さん。このおとぎばなしを採用なさったらどうですか」
検事が、やっと目をあけた。かれは、エンピツのおしりで書類のうえをぴしりとうった。
「だめだ。いくら答がうまく出ようと、仮定のうえに立つ答は、ほんとの答とはいえない。金属Qがはたして谷間三根子を殺したか、川内君を斬り、田口巡査を斬ったか。そのところの証明ができないかぎり、その答を採用するわけにはいかん。まさか検事が全文おとぎばなしの論告はおこなえない」
そうはいったが、検事も「もし犯人が金属Qならば」の仮定をおいて、答がずばりとでるその明快《めいかい》さには、心をうごかされているようすであった。
蜂矢はかるくうなずいた。その仮定さえ証明できれば、検事も了解《りょうかい》すると見てとったからである。
「さあ、その仮定《かてい》が真《しん》なりという証明ですが、これは針目博士に会って聞けば、一番はっきりするんです。しかし困ったことに針目博士は姿を消してしまった」
「針目は死んだと思うか、それとも生きていると思うか、どっちです」
「みなさんの調査では、針目博士はからだを粉砕
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