[#「わきばら」に傍点]をついた。やはりこの博士は気が変だよというつもりだった。警部の顔に、決心の色が見えた。かれは、いつもの大きな声になって、博士にいった。
「陳列棚に戸のしまっている棚がたくさんある。あれもいちいち開《ひら》いて見せなさい」
博士のおどろきは絶頂《ぜっちょう》にたっした。かれはふるえる自分の指をくちびるに立てた。そしてあきらめたというようすで、ふたりをさしまねいた。
博士のうしろに勝ちほこった川内警部と、いよいよむずかしい顔の長戸検事がついていく。
おそろしい異変
針目博士は、陳列棚《ちんれつだな》の前に立って、戸のしまっている棚を一《ひ》イ二《ふ》ウ三《み》イと八つかぞえた。その小さい戸の上には、骸骨《がいこつ》のしるしと、それから一、二、三の番号とが書きつけてあった。
博士は、用心ぶかく「骸骨の一」の戸を、しずかに手前へ引いた。
中には、おなじようなガラス器があり、それの中に見られたものは、よく見ないとわからないほどの細い針金でもって、だ円形《えんけい》のかごのような形を、あみあげたものだった。
検事にも警部にも、それはすこしも、おどろ
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