のぞきこんだり、戸棚の引出《ひきだし》をぬきだしたりして、どんどん仕事を進めていった。
だが、思うようなものはすぐには見つからなかった。
この部屋の、博士がいま腰をおろしているのと、ちょうど対角線上の隅《すみ》にあたるところに、一部に黒いカーテンがおりていた。それを開いて中へ入った川内警部は、そこにもやはり大きな引出が、三段十二個になってならんでいるのを発見した。その引出は、そうとう大きかった。しかしかぎもかかっていなかった。引出にはそれぞれ番号札がついていた。
警部が、その引出のひとつに手をかけたとき、誰も気がつかなかったが、針目博士の口のあたりには、あやしいうす笑いがうかんだのであった。もちろん川内警部は、それに気がつくはずもなく、引出のとってに力をいれて、ぐっと引きだした。
「おや、これは何だ!」
警部は、すっとんきょう[#「すっとんきょう」に傍点]な声をあげた。彼の顔からすっかり血の気が引いてしまった。
見よ、その半びらきになった引出の中には、黄いろくなった人間の足が二本ならんでいた、いや、足だけではない。裸体《らたい》のままの死骸《しがい》がそこにはいっているにちが
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