きらぼうにものをいう。
「わたしどもは、他殺事件だと考えています」
「他殺? ふーン。下手人は誰でしたか」
博士はおなじ調子できく。
「さあ、それがもうわかっていれば、われわれもこんな顔をしていないのですが……」
と検事はちょっと皮肉めいたことばをもらし、
「真犯人をつきとめるためには、ぜひとも、あなたのお力ぞえを得なくてはならないと思いまして、会見をお願いしたわけです」
「ぼくは、何もあなたがたの参考になるようなことを持っていないのです。生き残った者に聞いてごらんになるほうがいいでしょう」
「それはもうしらべずみです。あとはあなたにおたずねすることが残っているだけです」
「ああ、そうですか。それなら何でもお聞きなさい」
あざ笑う博士
そこで検事は、型のとおりに昨夜お三根が殺される前後の時刻において、博士はどんなことをしていたか、叫び声を聞かなかったか。格闘の物音を耳にしなかったか。犯人と思われる者のすがたを見、または足音を聞かなかったか。それから最初にこの事件に気がついたのは何時ごろだったか、などについて訊問《じんもん》していった。
これに対する博士の答えは、か
前へ
次へ
全174ページ中28ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング