つうでないからくり[#「からくり」に傍点]があるように思うんですがな……。で、例のするどい刃物を、何か音のしない弓かなんかで飛ばすような仕掛けがあるのではないでしょうか。博士というやつは、いろいろなからくり[#「からくり」に傍点]を作るのがじょうずですからね」
「きみの足首を斬った犯人が姿を見せないので、きみはからくり説へ転向したというわけか」
検事はやや苦笑した。
「どこか天じょう穴があるとか、壁の下の方に穴があるとかして、そこからぴゅーッと刃物のついた矢をうちだすのじゃないですかな。この家の博士なら、それくらいの仕掛けはできないこともありますまい」
「刃物を矢につけて飛ばすとは、きみも考えたものだ。しかしその刃物も、見あたらないじゃないか」
「いや、まだわれわれの探しかたがたりないのですよ。兇器がなくて、ぼくや田口がこんな傷をおうわけはないですからね」
そういっているところへ、戸口からのっそりとこの室内へはいってきた者があった。
近眼鏡《きんがんきょう》をかけた三十あまりの人物だった。あおい顔、ヨモギのような長髪《ちょうはつ》がばさばさとゆれている。下にはグリーンの背広服を着
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