って、検事がお会いしたいといっていると、会見を申しこんでくれたまえ」
「はい」
田口警官は、この部屋を出ていった。
長戸検事は、そのあとで室内をぐるぐる見まわしていたが、やがてかれの目は一点にとまった。それはこの部屋のまん中に、天じょうからさがっている電灯《でんとう》のガラスのかさ[#「かさ」に傍点]であった。
検事は歩きだして、そのまま下までいった。かさは検事の頭よりわずかに高かった。
「かけている。かさがかけている。新しいきずだ」
「ああ、そのガラスの破片《はへん》なら、ここにこれだけ落ちていました」
と、検事の部下の巡査部長の木村が、紙片に包んであったものをひろげて見せた。
「その破片は、このかさにあうかしらん」
「はい。ぴったりあいます。さっきためしてみました」
検事は、まんぞくそうにうなずいた。
「この入口のドアをこわす前に、この室内でガラスのこわれる音がしたと、この家の人たちは証言しているが、そのときこわれたのは、この電灯のかさなんだ。すると、被害者ではない他の生きている人間が、そのときこの室内にいたことになる。おそらくそれが犯人であろう」
検事は、ここまでは明
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