「それも明白《めいはく》。あの二十世紀文福茶釜、じつはアルミ製の釜だが、あの中にQがまじっていたのです。そうでなければ、釜が踊ったり綱わたりができるものではない」
「なるほど、では、なぜQが茶釜になったのですかな」
「針目博士邸――いやこの研究所からとび出したQがねえ、きみ、道ばたで、アルミの屑《くず》かなんかをふとんにして寝ていたんだ。Qは金属だから、金属をふとん[#「ふとん」に傍点]にしたほうが気持よく眠られる。そこで寝ていたところを、人がひろって屑金問屋へ持っていったんだ――いったんだろうと思う。Qは金属がたくさん集まっているので、いい気になって、その中に寝てくらしているうちにある日、熔鉱炉《ようこうろ》の中に投げこまれ、出られなくなった。そのうちに、鋳型《いがた》の中につぎこまれ、やがて、かたまってお釜になっちまった。そうなると出ることができない。やむをえず、文福茶釜を神妙につとめたんだというわけ。そんなところだろうと思う」
 博士は、まるで見てきたように、かたってきかせたのであった。もう時間は残りすくない。


   Qの興奮《こうふん》


「文福茶釜が綱から落ちてこわれた
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