うか、それとも針目博士に味方すべきであろうかと。
 針目博士は、はじめのうちは、器物《きぶつ》を投げることを控《ひか》えていた。しかし相手がむちゃくちゃにそれを始め、わが身が大危険となったので、博士はついに決心して、手にふれたものを相手めがけて投げつけた。もう一物のよゆうもないのだ。死ぬか、相手を倒すかどっちかだ。声をあげて蜂矢探偵に協力を頼むひまもない。
 ここに至って蜂矢探偵も心がきまった。
(ここはいちおう、正しい博士に味方して、仮面をはがれた相手を倒さなくてはならない)
 蜂矢探偵は、すぐ目の前の台の上においてある大きなスパナをつかんだ。それをふりあげて、金属Qになげつけようとした。そのとき遅く、かのとき早く、どしんと正面から腰掛《こしかけ》がとんできて、
「あッ」
 と蜂矢が体《たい》をかわすひまもなく、ガーンと彼の頭にぶつかった。かれは、一声うなり声をあげるとうしろへひっくりかえり、そのまま動かなくなった。
 それから、どのくらいの時間が流れたかわからないが、蜂矢はようやく息をふきかえした。ずきずき頭が痛む。それへ手をやってみると大きなこぶができていた。血もすこし出ていた。
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