った。
 そのマスクの肉づきは、うすいところもあり、またあついところもあり、人工樹脂《じんこうじゅし》でこしらえたものにちがいなかった。
 マスクのとれた下から出てきた新しい顔は、どんな顔であったろうか。
 それは針目博士とは似ても似つかない顔であった。頬骨のとび出た、げじげじ眉《まゆ》のぺちゃんこの鼻をもった顔であった。
「あッ」
 蜂矢探偵は、あきれはててその顔を見守った。
 はじめから、高いカラーをつけた針目博士を、怪しい人物とにらんではいたが、まさかこんな巧《たく》みな変装《へんそう》をしているとは思わなかった。
 しかもマスクの下からあらわれたその顔こそ、前に警視庁の死体置場から、国会議事堂の上からころがり落ちた動くマネキン少年人形の肢体《したい》とともに、おなじ夜に紛失《ふんしつ》した猿田の死体の顔とおなじであったから、ますます奇怪《きかい》であった。
 これでみると、蜂矢探偵をこの地下室へ案内した針目博士こそ、金属Qのばけたものであると断定して、まちがいないと思われる。怪魔金属Qは、議事堂の塔の上から落ちて死体置場に収容せられたが、夜更《よふ》けて金属Qはそろそろ動き出し
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