、金属Qか」
博士はうそぶいて笑った。
「君は金属Qを見たことがあるかね」
蜂矢は、すぐには返事ができなかった。見たと答えるのが正しいか、見ないといったほうがよいか。
「はっきり手にとってみたことはありませんねえ」
「手にとってみるなんて、そんなことはできないよ。だが、すこしはなれて見ることはできるのだ。どうだ、見たいかね」
「ぜひ見たいものですね」
「よろしい。見せてやろう。金属Qを、近くによってしみじみ見られるなんて、きみは世界一の幸運者《こううんもの》だ」
そういうと博士は、いきなり上衣をぬぎすてた。チョッキをぬいだ。高いカラーをかなぐりすてた。
その下から、おそろしい大きな傷あとがあらわれた。くびからのどへかけて、はすかいに十センチ近い、大傷《おおきず》を、あらっぽく糸でぬいつけてある。そんなひどい傷をおって、死ななかったのが、ふしぎである。
博士は、ワイシャツもぬぎとばして、上半身はアンダーシャツ一枚になった。
それでもうおしまいかと思ったが、博士はまたつづけた。手を頭の繃帯《ほうたい》にかけた。それをぐるぐるとほどいた。
「おおッ」
ようやくにしてとれた長い繃
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