すぐさまはね起きると、こんどはふたりには目もくれず金庫の前にとんでいった。すると金庫は、とつぜん火を吹いた。金庫のかたい扉《とびら》のまん中に大穴があいた。怪人は、その中から、蜂矢のたいせつにしていた茶釜の破片をつかみだした。
「だめだ。これはただの鉄片《てつへん》だ。おれがさがしている大切な十四番|人工細胞《じんこうさいぼう》ではない。ちえッ、いまいましい」
 がちゃんと、鉄片は床にたたきつけられた。と怪人は大きなマントをひるがえして窓からさっととび出した。
「ああッ、待て」
 蜂矢は立ちあがって、窓から外へ手をのばした。しかしそれはもう間に合わなかった。
「二郎君。怪人の行方《ゆくえ》を監視していてくれ。ぼくは長戸検事《ながとけんじ》のところへ電話をかけるから……」
 蜂矢はいす[#「いす」に傍点]の背をとびこえて、電話機のところへとんでいった。


   怪魔《かいま》の最後《さいご》?


 怪魔金属《かいまきんぞく》Qが逃げた!
 怪金属Qは、長い黒マントに黒頭巾《くろずきん》を着て人間の形をよそおい、日比谷公園《ひびやこうえん》の方へ逃げた。
 怪金属の実体《じったい》とい
前へ 次へ
全174ページ中116ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング