われわれの前へ脚光《きゃっこう》をあびてあらわれた、そのお目見得《めみえ》の事件について、これから述べようと思う。
それは恐ろしいなぞ[#「なぞ」に傍点]にみちた殺人事件であった。針目博士邸において、お手伝いさん谷間三根子《たにまみねこ》が密室においてのど[#「のど」に傍点]を切られて死んでいた事件である。
申しおくれたが、わたしは探偵|蜂矢十六《はちやじゅうろく》という者である。
密室の事件
この血みどろな事件を、あまりどぎつく記すことは、さしひかえたい。これはそういう血みどろなところをもって読者をねらうスリラー小説、もしくはグロ探偵小説とは立場を異《こと》にしているのであるから……
どのようにして谷間三根子《たにまみねこ》が死んでいたか。そして、そこはどんなぐあいに外からの侵入《しんにゅう》をゆるさない密室であったか――を、まずのべたいと思う。
谷間三根子はお手伝いさんであった。としは二十三歳であった。お三根《みね》さんと呼ばれていたから、これからはお三根と書こう。
お三根は、ほかのお手伝いさんとはちがい、ひとりだけ針目博士の研究所である煉瓦建《れんがだて
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