さっきの相手はふたたび出なかった。
通話はあきらめた。
だがこれはおかしなことになった。あやしい客がくるという警告だ。あの通話者《つうわしゃ》は、いったい何者だろうか。同情者《どうじょうしゃ》なのであろうか。それとも脅迫者《きょうはくしゃ》がみずから電話をかけてきたのであろうか。
ちょうどそのとき、玄関の呼鈴《よびりん》が鳴った。訪問客だ。はたして、さっき電話で注意をうけた怪人物の来訪であろうか。それともふつうの事件依頼人《じけんいらいにん》であろうか。
蜂矢は、玄関へ出ていって、秘密の透視窓《とうしまど》ごしに、外にたっている訪問客のすがたを見た。まっ黒な長いマントに、おなじ黒の頭巾《ずきん》をすっぽりかぶった異様な人物が、まるで影のようにそこに立っていた。
蜂矢探偵は、ぎくりとした。
怪少年
何者だろう。ふしぎな服装の訪問客は、顔を頭巾の奥ふかくかくしているので、誰だか見当がつかなかった。
「先生。あやしい人ですよ。おいかえしましょうか」
小杉少年が、蜂矢探偵の方を心配そうな顔で見て、そういった。その訪問客は、長い黒マントの下にピストルぐらいかくしていそ
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