あろう。
そうだとすると、怪金属は、どこかに今も生きている可能性がある。可能性があるというだけのことで、かならず生きているとはいえない。この二十日間、世の中に、怪金属を思い出させるような怪事件が報道されないところをみると、怪金属はあるいはすでに、死滅《しめつ》してしまったかもしれないのだ。
蜂矢探偵は、きょうは実験室にはいって、れいの黒箱を解体し、いろいろとしらべている。
かんじんの真空管《しんくうかん》や同調回路《どうちょうかいろ》がないので、このしらべもなかなか困難であったが、しかし蜂矢探偵は、持ちまえのやりぬく精神をもって、こつこつと仕事をすすめていった。
すると、とつぜん電話がかかってきた。
蜂矢は、ドライバーをほうりだして、受話器を取りあげた。異様《いよう》につぶれた声が聞こえてきた。
「……もしもし。探偵の蜂矢さんは、あんたかね」
「そうです。蜂矢十六《はちやじゅうろく》です。あなたはどなたですか」
「蜂矢君。きみは身のまわりを注意したまえ。ひょっとするときょうあたり、おそろしい奴がたずねて――」
電話は、そこでぷつりと切れた。そのあといくら電話局に連絡しても、
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