てどうして金属Qを追跡することができるんだい。そんなものは、どこにもすがたを見せたことがない」
「さあ、そこですよ。金属Qのすがたを見た者はない。また金属Qのすがたがどんな形をしているか、それを知っている人もないようです。ですが金属Qは、まず第一に谷間三根子を殺害《さつがい》しました。あの密室をうちやぶって、中へとびこんだ連中は、室内に金属Qのすがたを発見することはできなかったが、そのすこしまえに金属Qが電灯のかさ[#「かさ」に傍点]にあたって、かさ[#「かさ」に傍点]をこわす音は耳で聞きました。そうでしょう」
 蜂矢の話は、事件のすじ道をたしかに前よりもあきらかにしたように思われ、検事も心を動かさずにいられなくなった。蜂矢はつづける。
「つまり、金属Qは、相当のかたさを持っているが、すがたは見えにくいものである。このように定義《ていぎ》することができます。このことを裏書するものは、つぎの警部と田口巡査の負傷です」
「あ、なるほど」
「見えない金属Qは、あの室内にとどまっていたんですが、きゅうにふとん[#「ふとん」に傍点]のしたかどこからかとび出した。そのとき川内警部の足首の上を、すーッと斬った。そして金属Qは室外へとび出したのです。そこは廊下です。廊下を博士の居間《いま》のある、奥のほうへととんでいく途中、田口巡査のほおを斬った。そうでしょう。こう考えて行けば、われわれは金属Qを追跡していることになる。そう思われませんか」
 蜂矢の顔は、真剣だった。


   「骸骨《がいこつ》の四」とQと


「なるほど。そう考えると、すじ道がたつ。感心したよ、蜂矢君」
 検事はポケットからタバコを出して、火をつけた。
「さあその先です」
 と蜂矢はこぶし[#「こぶし」に傍点]でじぶんの手のひらをたたいた。
「それから先、金属Qはどこへ行ったかわからない。わかっているのは、あなたがたが、博士に談判して、倉庫や研究室をおしらべになったことです。それから爆発が起こったというわけです」
「ちょっとまった、蜂矢君。れいの『骸骨の四』ね。第二研究室の箱の中からすがたをけしていて、針目博士がおどろいたあれだ。あの『骸骨の四』と金属Qとはおなじものだろうか。それとも関係がないものだと思うかね」
 検事も、いつの間にか、蜂矢のおとぎばなしに出てくる仮定を、しょうしょう利用しないではいられなくな
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