《ふんさい》して、死んだのだろうという結論になっていますね。ぼくもだいたいそれに賛成します」
「だいたい賛成か。すると他の可能性も考えているの」
「これは常識による推理ですが、針目博士はあの部屋の爆発危険《ばくはつきけん》をかんじて、あなたがた係官を隣室《りんしつ》へ退避《たいひ》させた。そしてじぶんひとり、あの部屋にのこった。博士のこの落ちつきはらった態度はどうです。博士はじぶんが助かる自信があったから、あの部屋にのこったんです。そう考えることもできますでしょう」
「それは考えられる。だがあのひどい爆発は、われわれがあの部屋を去るとまもなく起こった。博士が身をさけるつもりなら、なぜそのあとで、われわれのあとを追って出てこなかったのであろうか。そうしなかったことは、博士は爆発から身をさけることができなかったんだ。それにあの爆発は、じつにすごいものだったからね」
検事は、そのときのことを思い出して、ため息をついた。
「あなたがたから見れば、爆発はたいへんすごいものであり、爆発はあッという間に起こったと思われるでしょう。しかし針目博士はあの部屋のぬしなんだから、そういうことはまえもって知っていたと思うんです。だから、いよいよわが身に危険がせまったときに、博士は非常用の安全な場所へ、さっととびこんだ。ただしこれは、あなたがたのあとについて、隣の部屋へのがれることではなかった。つまり、べつに博士は非常用の安全場所を用意してあり、そこへのがれたと考えるのはどうでしょう」
「そういう安全場所のあったことを、焼跡《やけあと》から発見したのかね」
「いや、それがまだ見つからないのです」
「それじゃあ想像にすぎない。われわれとて、もしやそんな地下道でもあるかと思ってさがしてみたが、みつからなかった」
「わたしは、もっともっとさがしてみるつもりです」
「いくらさがしても見つからなかったらどうする。それまでこの事件を未解決のまま、ほおっておくわけにはゆくまい」
「そうです。博士の安否《あんぴ》をたしかめるほかに、他のいろいろな道をも行ってみます。そのひとつとして、わたしは金属Qを追跡《ついせき》しているのです」
「え、なんだって、金属Qを追跡しているって。きみは正気《しょうき》かい」
長戸検事は目をまるくして、蜂矢探偵の顔を見つめた。
「検事さん。わたしはもちろん正気ですよ」
「だっ
前へ
次へ
全87ページ中39ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング