のの針目博士だかわからなくなった。
「きみこそ金属Qだ。そんなにがんばるのなら、仮面《かめん》をはいでやるぞ」
とあとからあらわれた博士が自信ありげにいって、蜂矢の名を呼んだ。
「なにか用ですか」
「そのニセモノのそばへ寄《よ》って、頭に巻いている繃帯《ほうたい》をぜんぶほどいてくれたまえ」
と、機銃みたいなものを抱えている博士がいった。
「むちゃ[#「むちゃ」に傍点]をするな、傷をしているのに、繃帯をとるなんて、人道《じんどう》にはんする」
と、壁のそばに立っている方の博士が、すぐ抗議した。
「蜂矢君。早く繃帯をとってくれたまえ。繃帯をとっても、血一滴《ちいってき》、出やしないから心配しないで早くやってくれたまえ」
蜂矢は、ふたりの博士の間にはさまって、迷《まよ》わないわけにいかなかったが、とにかく繃帯をといてみれば、どっちがほんものかニセかがわかるかもしれないと思い、ついに決心して壁の前に立っている博士の頭へ手をのばした。博士は何かいおうとした。がもうひとりの博士が、機銃みたいなものを、いっそうそばへ近づけたので、顔色をさっと青くすると、おとなしくなった。
蜂矢は、その機《き》に乗《じょう》じて、長い繃帯をといた。なるほど、繃帯はどこもまっ白で血に染《そま》っているところは見あたらなかった。ただ、その繃帯をときおえたとき、博土の頭部《とうぶ》をぐるっと一まわりして、三ミリほどの幅《はば》の、手術のあとの癒着《ゆちゃく》見たいなものが見られ、そのところだけ、毛が生えていなかった。
なお、もう一つ蜂矢が気がついたのは、額《ひたい》の生えぎわのところの皮が、妙にむけかかっているように見えることだった。そのとき、後からあらわれた博士の声が、いらだたしく聞こえた。
「蜂矢君。こんどは、その高いカラーをはずしたまえ」
「カラーをはずすのですね」
はじめから博士の特徴《とくちょう》になっていたその高いカラーを、蜂矢は、いわれるままに、とりはずした。すると蜂矢探偵は、そこに醜《みにく》い傷《きず》あとを見た。短刀《たんとう》で斬《き》った傷のあとであると思った。いつ博士はこんな傷をうけたのであろうか。すると、またもや、あとからあらわれた博士がいちだんと声をはりあげて、蜂矢に用をいいつけた。
「つぎは、その男の面《つら》の皮《かわ》をはぎたまえ。えんりょなく、はぎ取
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