ごたごたとならんでいて、工場のような感じがする。もちろん人は、ひとりもいない。
「ここは、なにをするところだか、きみにわかるかい」
針目博士は、からかい気味《ぎみ》に蜂矢に話しかける。
「さあ、ぼくにはわかりませんね」
あの第二研究室の下に、こんなりっぱな部屋があるとは、想像もつかなかった。針目博士という学者は、じつにかわった人だ。
「わからなければ、教えてあげよう。この機械は、金属人間を製作する機械なんだ。つまりここは、金属人間の製作工場なんだ。どうだ、おどろいたか」
「金属人間の製作工場ですって」
蜂矢は、思わず大きな声を出して、問いかえした。博士がこんなにずばりと、金属人間のことを口にするとは予期《よき》していなかったのだ。
「そのとおりだ。金属人間をこしらえる工場なんだ。きみは知っているかね、金属人間というものはどんなものだか?」
博士の方から、かねて蜂矢が最大の謎と思っている金属人間のことに、ずばりとふれてきたものだから、蜂矢はおどろきもし、また内心ふかくよろこびもした。
「くわしいことは知りませんが、針目博士が金属Qの製作に成功せられたことは聞いています」
「ははは、金属Qか」
博士はうそぶいて笑った。
「君は金属Qを見たことがあるかね」
蜂矢は、すぐには返事ができなかった。見たと答えるのが正しいか、見ないといったほうがよいか。
「はっきり手にとってみたことはありませんねえ」
「手にとってみるなんて、そんなことはできないよ。だが、すこしはなれて見ることはできるのだ。どうだ、見たいかね」
「ぜひ見たいものですね」
「よろしい。見せてやろう。金属Qを、近くによってしみじみ見られるなんて、きみは世界一の幸運者《こううんもの》だ」
そういうと博士は、いきなり上衣をぬぎすてた。チョッキをぬいだ。高いカラーをかなぐりすてた。
その下から、おそろしい大きな傷あとがあらわれた。くびからのどへかけて、はすかいに十センチ近い、大傷《おおきず》を、あらっぽく糸でぬいつけてある。そんなひどい傷をおって、死ななかったのが、ふしぎである。
博士は、ワイシャツもぬぎとばして、上半身はアンダーシャツ一枚になった。
それでもうおしまいかと思ったが、博士はまたつづけた。手を頭の繃帯《ほうたい》にかけた。それをぐるぐるとほどいた。
「おおッ」
ようやくにしてとれた長い繃
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