いだしてみるがいい」
「ふーん。どうもおかしいと思った。針目博士が生きているなら、これはぐずぐずしてはいられない。おい、博士はどこにいる」
「知らないよ。ほんとうに知らない。ぼくたちも博士の居所《いどころ》を探しあてたいと思っているのだ」
「ううーん。うそつきどもの集まりだ。よし、おれは他人の力によって征服されるものか。さあ、仕事だ。茶釜の破片を出せ。いや、きみの返事なんかいらない。直接にきみの脳からきいてやる」
 そういうと、怪しい客――金属Qは蜂矢におどりかかった。
 蜂矢はひらりとからだをかわしたが、金属Qはとてもす早く、蜂矢は二度目にはねじ伏《ふ》せられた。とたんにひどい頭痛を感じた。
「うーッ、苦しい」
「はっはっはっ。金庫の中にしまってあるのか。もうきみには用はない。いや、殺してやるんだ」
 このとき小杉少年がとびこんできて、ゴルフのクラブで、金属Qのうしろから力いっぱいなぐりつけた。
「ややッ。誰だ」
 金属Qは、びっくりしてうしろをふり返った。そのすきに蜂矢は立ちあがって、いす[#「いす」に傍点]をつかんで怪人の足をはらった。怪人は大きな音をたててひっくりかえった。が、すぐさまはね起きると、こんどはふたりには目もくれず金庫の前にとんでいった。すると金庫は、とつぜん火を吹いた。金庫のかたい扉《とびら》のまん中に大穴があいた。怪人は、その中から、蜂矢のたいせつにしていた茶釜の破片をつかみだした。
「だめだ。これはただの鉄片《てつへん》だ。おれがさがしている大切な十四番|人工細胞《じんこうさいぼう》ではない。ちえッ、いまいましい」
 がちゃんと、鉄片は床にたたきつけられた。と怪人は大きなマントをひるがえして窓からさっととび出した。
「ああッ、待て」
 蜂矢は立ちあがって、窓から外へ手をのばした。しかしそれはもう間に合わなかった。
「二郎君。怪人の行方《ゆくえ》を監視していてくれ。ぼくは長戸検事《ながとけんじ》のところへ電話をかけるから……」
 蜂矢はいす[#「いす」に傍点]の背をとびこえて、電話機のところへとんでいった。


   怪魔《かいま》の最後《さいご》?


 怪魔金属《かいまきんぞく》Qが逃げた!
 怪金属Qは、長い黒マントに黒頭巾《くろずきん》を着て人間の形をよそおい、日比谷公園《ひびやこうえん》の方へ逃げた。
 怪金属の実体《じったい》とい
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