に、ぴかりと電光が暗闇を一しゅんかんま昼のように照らした。
「あッ、あれだッ」
船長はもうすこしで気絶《きぜつ》するところだった。彼は見た。はっきり見た。おそろしい大怪物が、メインマストの上でくわっと口を開き、こっちをねめつけているのを。
恐竜だ。たしかに恐竜だ。
ついに、恐竜がやって来たのだ。
セキストン伯爵は、恐竜は昼間だけしか出ないといったが、夜も出るじゃないか。それならそうと、注意しておいてくれればいいのに……。
こまった。どうして恐竜とたたかうか。
大砲なんか、本船にはない。
それにしても、恐竜はもう死んだとばかり思っていたのに、なぜ現われたのか。
そうか、分った。首を大砲の弾丸でけずられた恐竜は、うらみにもえあがり、この船をおそって来たのだ。
おい、ちがうぞ。おれがやったことではないのだ。
と、ボールイン船長の頭の中は大混乱《だいこんらん》して、生きた気持もしない。
「船長、船長。あれは動物ですよ。海に住むとても大きな動物ですぞ」
わかっている、恐竜だ。
「恐竜だ。みんなピストルでも何でもいいから、あいつをうて」
「いや、うつな。あいつを怒らせると、た
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