んど赤道にそうようにして、西へ西へと船脚をはやめていたのだ。
 とつぜんおそろしい破局《はきょく》がやってきたのは、サンフランシスコ出港後第十三日目のことであった。たぶん明日あたり、ニューアイルランドの島影が見えはじめるはずだった。それが見えれば、本船は、その尖端《せんたん》のカビエンの町を左に見つつ南方へ針路をまげ、そして島ぞいにラボール港まで下っていくことになっていたのだ。
 いや、カビエンもラボールの話も、今はむだである。わがモンパパ号は、カビエンもラボールも、どっちの町も見はしなかったのだ。それどころか、ニューアイルランドの島かげさえ、ついに見ることがなかったのだ。
 おそろしい破局が、それよりも以前に来たのである。モンパパ号は、深夜《しんや》の海に一大音響をあげて爆沈《ばくちん》しさったのである。
 そのときのことを、すこしぬきだして、次に記しおく。


   愛犬《あいけん》の行方《ゆくえ》


 玉太郎は、ふと目がさめた。
 おそろしい夢にうなされていたのだ。自分のうめき声に気がついて、目ざめた。身は三等船室のベットの上に、パンツ一つの赤はだかで横になっていることを発見し
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