ぬぐいながら、そういった。
「何がむだなんです」
「これさ。こうして枯草をつみあげても、だめなんだ。すぐ役に立たないんだ。だって、そうだろう。枯草の山ができても、それに火をつけることができない。ぼくは一本のマッチもライターも持っていないじゃないか。うわッはっはっはっ」
「ああ、そうか。これはおかしいですね」
玉太郎も、はじめて気持よく笑った。いつもマッチやライターが手近にある生活になれていたので、この絶海《ぜっかい》の孤島《ことう》に漂着《ひょうちゃく》しても、そんなものすぐそばにあるようなさっかくをおこしたのだ。
「第一の仕事がだめなら、第二の仕事にかかろうや。この方はかんたんに成功するよ。ねえ玉ちゃん。腹いっぱい水を飲みたいだろう」
「ええ。そうです。その水です」
「水はそのへんに落ちているはずだ。どれどれ、いいのをえらんであげよう」
玉太郎は、ラツールがまた気がへんになったのではないかと思った。なぜといって、見わたしたところ、そこには川も流れていないし、海には水がうんとあるが、これは塩からくて飲めやしない。井戸も見あたらない。
ラツールは林の中にわけいって、ごそごそさがしも
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