にぎやかにたたきだした。
ポチも、二人のところへとんでくると、うれしそうに尾をふって、じゃれだした。
焼けつくような陽《ひ》が、近づく謎の島の椰子《やし》の林に、ゆうゆうとかげろうをたてている。
上陸に成功
筏は、海岸に近づいた。
海底はうんと浅くなって、うす青いきれいな水を通して珊瑚礁《さんごしょう》が、大きなじゅうたんをしきつめたように見える。その間に、小魚が元気よく泳いでいる。
「きれいな魚がいますよ。ラツールさん。あっ、まっ赤《か》なのがいる。紫色のも、赤と青の縞《しま》になっているのも……」
「君は、この魚を標本《ひょうほん》にもってかえりたいだろう」
「そうですとも。ぜひもって帰りたいですね、全部の種類を集めてね、大きな箱に入れて……」
「さあ、それはいずれ後でゆっくり考える時間があるよ。今は、さしあたり、救助船へ信号する用意と、次は食べるものと飲むものを手に入れなければいかん。その魚の標本箱に、われわれの白骨《はっこつ》までそえてやるんじゃ、君もおもしろくなかろうからね」
「わかりました。魚なんかに見とれていないで、早く上陸しましょう」
「おっと、ま
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