ちは今までいやになるほど扱っているじゃないか」
「いったい、ボートをこしらえて、どうするんですか」
「あのぴかぴかの宝をよ、おれたちが洞窟の外からボートにのってはいって、すっかりちょうだいしようというんだ。えへへ、どうだ、世界一の名案だろうが」
 モレロは、すごい顔に笑みをたたえて、胸をたたいた。


   希望の綱《つな》


 洞穴の水は、だんだん水位をあげてきた。
「おい、もう胸のへんだよ」
 ケンがいった。その声が洞穴《ほらあな》の天井にこだまして、ガンガンとひびいた。
「明日の朝、眼がさめたら、僕たちは土佐《どざ》エ門《もん》と名前がかわっているだろうな」
 ダビットはおどけた口ぶりでいった。みんなを元気づけるためのじょうだんも、それが本当になる恐れが十分あると思うと、誰も笑う者はいなかった。
 死は刻々《こくこく》と四人の身体に、音もなくしのびよってくるのだ。
「もうすぐ首だ」
 空気が逃げてゆくので、水はぐんぐんましてゆく。このままでいったら、もうしばらくで、この洞穴は水びたしになる。
 入口はすでに水の扉でふさがれている。
 洞穴の中はもうまっくらだ。
「ダビット、大丈
前へ 次へ
全212ページ中150ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング