らにも、救援の仕事をさせないと、不公平だ。おれが引立ててやろう」
「まあ、待ちたまえ、モレロ君」とマルタンがとめた。そして葉巻を一本出してモレロにあたえた。「ツルガ博士はあのままでいい。いっしょに連れていっても、かえってわれわれの足手まといになるだけだ。なんにしろ、恐竜群にたいして、われわれはすばやく行動しないと、とりかえしのつかないことになるからね」
「ふん。じゃあ、このたびは見のがしてやるか」
モレロは、にくにくしげにいった。よほど彼は、博士が、虫がすかぬらしい。
断崖《だんがい》をのぼり、それから林の中をはいって地下道を通り恐竜の洞窟《どうくつ》へ入った。
洞窟のものすごい光景。海水に身体をひたしてうずくまる四頭の恐竜の姿。洞窟の中へさしこむ陽《ひ》の光のまぶしさ。わわんわわんと反響する波の音。はじめてこの光景を見る四人の新来者たちは、みんな顔色をかえた。
「すごいところがあったもんだ」
「地球の上に、こんな別天地《べってんち》があろうとは、夢にも思わなかった」
「これは、地獄の入口かも知れない」
「恐竜の巣にとびこむなんて、契約になかったぞ」
四人が四人、それぞれに恐怖につつまれてしまった。
マルタンは指揮をとる。
「さあ、作業はじめだ。ロープを、まず四本は、下へおろさなくてはならない。そこらにしっかりした岩を見つけてロープの端をしばりつけるのだ」
「見物はあとにして、こっちへ集って下さい」
と、玉太郎がさけぶ。
「いいきみだ。へいぜい、えらそうな口をきいた連中も崖の中段で小さくなっているじゃないか。うわはははは」
モレロは毒舌《どくぜつ》をふるう。
「モレロ君。君は自分の分を、このロープでくくりつけたまえ」
「わたしはいやだよ。下に下りる気はない」
「ほんとかね。わしはかけをしてもいい。今に君は、きっと下へ下りるだろう」
「とんでもないことだ。しかしあの恐竜をたねに、なんとか金もうけを……うむ、むにゃむにゃむにゃ」
「では、張さん。あなたは身体がかるいから、水夫がおろしたロープで、先へ下りて下さい。なあに、下の連中に、元気のつくような話をしてくれれば、それでいいんですよ」
マルタンは張にいった。
「伯爵の姿は見えんですね」
「そうです。張君。玉太郎君の話によると、一番下まで落ちたそうです」
「どうして彼ひとりが落ちたんですかな」
「それはねえ、張さん」と玉太郎が説明の役にあたった。
「伯爵は、とつぜんロープに下って下りてきたのです。ところがそのロープにはダビットさんとラツールさんがとりついていたもんだから、三人の人間の重味《おもみ》にはたえられなくなって、ぷつりとロープが切れたんです」
「ほう、ほう」
「上の方にいた伯爵は、もんどりうって一番下まで落ちました。なぜそんなむちゃを伯爵がしたのか分りませんが、ぼくが感じたところでは、伯爵はなにかにおどろいたためだと思います」
「なにかにおどろいたとは?」
「その前に、伯爵はひとりで、洞窟のあちこちを見まわしていましたがね、そのうちにおどろきの声とともに何か一言みじかいことばをいって、ロープへとびついて下りようとしたのです」
「短いことばというと……」
「ぼくは、よくおぼえていないのですが、なんでも、“あ、見えた、金貨の箱だ”といったように思ったんです」
「えっ、金貨の箱」
張がおどろいたばかりか、それに聞き耳をたてていた二人の水夫も、つとばかりに仕事の手をとめた。
モレロは、もっとはげしくおどろいたと見え、満面朱《まんめんあけ》にそめると、一本のロープをとりあげて、自らいそいで岩根にくくりはじめた。
伯爵《はくしゃく》の行方《ゆくえ》
ロープが張られて、ラツールはダビットに助けられ、上へ引上げられた。
「おお、玉ちゃん」
ラツールは玉太郎にだきついた。
「よかったねえ、ラツールさん」
「ありがとう。君は三度もぼくの生命をすくってくれた」
二人はうれし涙にくれて、いつまでも抱きあっていた。
その間に、救援隊の四人はロープをつたわって、崖の中段におりた。
「ははあ、あれだな。ぴかぴか光っていらあ」
「ほんとに、あれは金貨らしい光だ」
フランソアとラルサンが、小さい暗礁の上に光るものを見つけて、感心している。
張は、無言《むごん》だ。
モレロは、うなりつづけた。そして口の中で、ぶつぶつなにかいっている。
「……それで分った。あの伯爵め、恐竜以外に、何かもうけ仕事のこんたんがあると、にらんでいたんだが……まさか、これほど大きいものとは思わなかった。……どう見ても、海賊の残していった金貨の大箱が五つも六つもあるようす……時価になおすと、どえらい金高になるぞ。……恐竜を生捕《いけど》ることはやめて、これはどうしても、あの金貨をねらわにゃ
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