ねかえって、ガンガン大きくこだました。ラツールが、手をふった。


   恐竜と闘《たたか》う


 それから船の検査がはじまった。
 まず舵《かじ》は大丈夫使える。船底はかなり傷《いた》んではいるが、水のもれる心配はまずない。帆は完全といってもよい位に保存されている。小船《ボート》も頑強《がんきょう》な奴が積んであり、難船の時の用意も出来ている。
 つめたいこの洞穴《ほらあな》の中に保存されているということは、たとえば冷蔵庫の中に貯蔵されたのと同じ効果を生じたものらしい。ふしぎなほど何百年もの前のものが、そのまま使用できた。
 ラウダの洞穴から、わずかだが、食料と飲料水がはこびこまれた。
 船長室のあたりはさすがに気味が悪かったが、あとはすこぶる快適《かいてき》であった。
「このままで潮にのってみよう。船がどんな方向へ出るかは、運命の神にまかせることにするより手がないからな」
 その夜、一同は甲板の船首の方にあつまって寝ることにした。
「海岸にまたせてある連中をどうするかな」
「まず海に出てからの問題にしよう。僕らがすっかり安全とわかったら救助に行ってもおそくはあるまい」
 ダビットはカメラをかかえて――
 玉太郎はポチをだいて――
 ラツールはまだ痛む脚をかかえこんで――みんなそれぞれの姿をして眠りについた。
 どのくらい眠ったか。
 なにしろ一同は疲れているから、身が安全だとわかるとすぐ眠くなる、死んだようになって眠るんだ。
 ポチが、ウーッ、ウーッとうなったので、玉太郎が眼をさました。
「どうした、ポチ」
 眼をさましておどろいた。
 船はいつの間にか海にいるではないか。恐竜島《きょうりゅうとう》が、千|米《メートル》もの、むこうに見える。
「おーい、おーい、ケンさん、ダビットさん、ラツールさん、張さん」
 玉太郎は一人ずつおこしてまわった。
 まだ太陽はあがらなかったが、もう東の空は明るい。
「ああ、こりゃ、どうだ」
 みんなは眼をこすりこすり起きたが、あたりのようすを見ると、眠気《ねむけ》は一ぺんに吹きとんでしまったらしい。
「助かったぞ、救われたぞ」
 ダビットと、ラウダが手をにぎりあって、甲板の上でおどった。
「ラ、ラ、ラ、ラ、ラララ、ラーラ」
 楽しそうだ。
「諸君」
 ケンが一同を見まわしながら、おごそかに云った。
「吾々はこれで助かった。けれど
前へ 次へ
全106ページ中92ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング