、船客たちは大あわてで乗りこんだ。
「ふふふ、これが、こしらえ物の恐龍だと分からないのかなあ。船長まであわてているらしい」
「おやおや、針路をかえだしたぞ。逃げだすつもりと見える」
巨船は大きな腹を見せ、浪を白くひいて変針《へんしん》した。そのあわてた姿は、乗組員や船客のさわぎと共に、ぼくらの写真機におさめられた。巨船は、やがてお尻をこっちへ見せて、全速力で遠ざかっていった。
ぼくたちは、手を叩《たた》き、膝をうち、ころげまわって笑った。
恐龍号は、それからギネタの方へ引っ返した。しかし、日はまだ高いので、港へはいることはよくなかった。そこでぼくたちは相談して、ギネタの[#「ギネタの」は底本では「キネタの」]北東七マイルのところにある小さい無人島へ艇をつけ、夕方まで休むことにした。そこはマングロープの密林が海の上まで押し出していたので、その密林のかげにはいっていれば、恐龍の長い首も海面から見える心配がなかった。
ぼくたちは、その無人島のかげへ早くはいってよかったと思った。というのは、それから間もなく、頭上をぶんぶんと飛行機がいく台もとび交《か》い、うるさいことになったからだ。察
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