おそれがあるので、いい加減に潜航にうつった。

   いたずらの祟《たた》り

 大汽船グロリア号に出会ったのは、その翌日のことだった。
「おう。来るぞ来るぞ。こっちへ来る。でかい汽船だ。一万トン以上の巨船《きょせん》だ」
 サムが見張番だったが、えらい声をあげた。そこで急ぎ潜航に移った。
 あとは潜望鏡だけで覗《のぞ》いている。
 巨船は、何にも知らず近づいて来るようである。
「ねえサム。あの汽船は、きっといい望遠鏡を持っているだろうから、遠くの方で浮きあがって、近くへ寄らないのがいいだろう」
「うん。しかし、あまり遠くはなれては、相手の方で恐龍の存在に気がつかないかもしれない。花火をあげる用意をしておけばよかったね」
「恐龍が花火をあげるものか」
 結局のところ、恐龍号はグロリア号の針路前を横切ることになった。距離は半マイル。これならいやでも相手は気がつく。
 ぼくたちは念入りに、海面から恐龍を出した。しきりに恐龍の頭をふり動かした。口もあいてみせた。
 このきき目は大したものであった。巨船の甲板では乗組員や船客が、あわてて走りまわるのが潜望鏡を通して見えた。ライフボートは用意され
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