現地人の舟であった。
「見つけた。六隻《ろくせき》よりなる船団《せんだん》!」
「えっ、六隻よりなる船団だって。おい、よく見ろよ。それは艦隊じゃないのか。艦隊をおどかしたら、大砲やロケット弾でうたれて、こっちはこっぱみじんだぞ」
サムはおそれをなしている。
「よく見た。六隻よりなる船団なれども……」
「なれども――どうした」
「帆を張った現地人のカヌーじゃ」
「なんだ、カヌーか。カヌーじゃ、おどかしばえもしないが、店開きだから、やってみよう」
そして、かねての手筈《てはず》どおりやった。すぐさま恐龍号は潜航にうつり、カヌー舟団を追い越した。そして、ぬーっと浮上《ふじょう》にうつったのである。恐龍はかま首をもたげ、ゆらゆらとふりながら、現地人の、カヌーをにらみつけた。
どぼん、どぼん。ばたん、ばたん。
きゃーっ。きゃきゃーっ。
えらいさわぎだった。現地人たちは、手にしたかい[#「かい」に傍点]をほうり出し、大急ぎで海中にとびこんだ。
ぼくたちは、潜望鏡《せんぼうきょう》でこの有様を見て、おかしくて涙が出て、とまらなかった。
あまり永く恐龍の姿を出していると、正体を見破られる
前へ
次へ
全25ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング