ら浮上した。
艇長《ていちょう》と見張番とを、二人で、かわるがわるすることにした。はじめはサムが艇長で、ぼくが見張番をやった。
見張番は双眼鏡で、水平線三百六十度をぐるっと見まわして、近づく船があるかと気をつけるのだ。そのほかに、ときどき空へも目を向けて、飛行機に気をつける。飛行機はおどかすことができまいと思った。おどかせるのは船だけだ。船は見えたら、急いで潜航《せんこう》するのだ。そして船がいよいよこっちへ近づいたら、そのときにこっちはぬっと海面へ浮上《ふじょう》する手筈《てはず》にしてあった。
第一日は、大した相手にぶつからなかった。なにしろこのギネタの町は、そんなに繁盛《はんじょう》している町ではないから、一日のうちに、入港船も出港船も一隻もないことがめずらしくないのである。だから、港外の沖合に待っていたが、その日はついに獲物《えもの》がこなかったのだ。
「今日はだめだったね」
帰って来てから、ぼくはサムにいった。
するとサムは、鞄《かばん》の中から海図を出してきて、卓上《たくじょう》にひろげながら、
「今日のところでは、毎日あぶれるかもしれない。もう三十マイル沖合いに
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