するところ、例の巨船グロリア号が、ぼくらの恐龍を見てびっくり仰天《ぎょうてん》し、そのことを無電で放送し、救助をもとめたため、救助の飛行機が方々からこっちへ飛んで来て、空中からの捜索《そうさく》をはじめたのであろう。
 次から次へと、新しい飛行機がのぞきにやってきた。だんだん大型機へかわっていった。
「しょうがないね。まだ飛行機のやつ、下界をのぞいているぜ」
「困ったねえ。もうすぐ日が暮れる。ぼくたちは夜間航海を習っていないから、明日の朝まで、ここを動くことはできやしないよ」
「そんなら、今夜はここに泊《と》まろう[#「泊《と》まろう」は底本では「泊《とま》まろう」]」
 ぼくたちは無人島のかげで一泊することになった。夜になっても飛行機はまだ捜索をつづけていた。中にはごていねいに照明弾を落としてゆく飛行機もあった。
「いやに大がかりになって来たね」
「きっと恐龍事件は世界中の大ニュースになって、さわがれているんだぜ」
「痛快だなあ。しかしカ[#「カ」に傍点]が多くていけないや」
 夜は白《しら》みかかった。
 さあ、早いところ帰航しようと思って、あたりの物音に耳をすました。すると、小さいながらぶーんと飛行機の音が聞こえるではないか。
「だめだ。まだ飛行機が、空にがんばっているよ」
「夜がすっかり明けちまうと、ちょっと出にくいんだ。困ったね」
 夜が明けた。飛行機の数はふえた。これではいよいよ動けない。
 その日も一|泊《ぱく》、次の日も、やむを得ず一泊した。困ったのは食糧だ。もっと持ってくればよかった。水は完全になくなった。上陸してヤシの実のくさい水をのんで、ようようのどのかわきをとめて生きていた。

   恐龍《きょうりゅう》出現《しゅつげん》

 四日目の朝のこと、起きて船の外へ出てみると、うれしや飛行機の音がしない。そこでサムを起こした。
「よし、今のうちに出航だ。しかしその前にヤシの実を十個ばかり拾《ひろ》って、艇内にはこんでおく必要がある。これからまだどういう目にあうかもしれないから、水の用意はしておかないといけないんだ」
「なるほど。では二人で、五個ずつ拾ってくればいいんだね。ゆこう」
 サムとぼくとは急いで上陸した。それから近くのヤシの林へはいって、なるべく色の青いヤシの実を拾いあつめた。
 五個のヤシの実は、やっと両手に抱えて持ちはこびができる。ぼく
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