君の怠慢《たいまん》のお陰だ」
鬼課長はこれに応える言葉を持っていなかった。それで現場検分《げんじょうけんぶん》を申出でた。検事は点《つ》けたばかりの煙草を灰皿の中へ捨てながら、「儂は君が検分するときの顔を見たいと思っていたよ」と喚《わめ》いたが、そこで急に声を落して、日頃の雁金検事らしい口調になり、「全く、君のために特別に作られた舞台のようなのだ。しかし先入主はあくまで排撃《はいげき》しなけりゃいかん」
妙なことを云われると思いつつ、課長は雁金検事の先に立って、地下の秘密の通路から、地底に下りていった。地底には無限の魅惑《みわく》ありというが、その魅惑がよもやこのさんざん検《しら》べあげたキャバレーの地底にあろうとは思いもつかなかったことであった。――崩れかかったような細い石造《せきぞう》の階段が尽《つ》きていよいよ例のパチノ墓穴に入ると、そこには急設《きゅうせつ》の電灯が、煌々《こうこう》と輝いて金貨散らばる洞窟《どうくつ》の隅から隅までを照らし、棺桶の中の骸骨《がいこつ》も昨夜《さくや》そのまま、それから虚空《こくう》を掴《つか》んで絶命《ぜつめい》している痣蟹仙斎の屍体もそ
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