。またそれで今日捜査課長の席を汚さないでいるんですから……」
「じゃ仕方がないよ。僕の身元引受けが役に立たぬと思ったら遠慮なく彼の覆面を外《はず》してみたまえ、僕は一向構わないから」
「イヤそういうわけではありませんが……。しかし今夜はもう青竜王は出て来ませんよ。彼は逃げだせば、それでもう目的を達したんですから」
流石《さすが》は捜査課長だけあって、誰も考えつかないような疑点を示したのだった。だがそのときだった。例の隠れ柱が音もなくパックリと口を開き、その中から飛びだしてきたのが誰あろう、覆面の探偵だったから、気の毒な次第だった。
「うむ――」
と捜査課長は驚きのあまり、思わず呻《うな》った。
青竜王は検事たちの姿をみつけると、ズカズカと走りよった。
「雁金さん。痣蟹の逃げ路が、とうとう分りましたよ。このキャバレーの縁《えん》の下を通って、地階の物置の中へ抜けられるんです。そこからはすぐ表へとびだせます。貴方《あなた》の号令がうまくいっていないのか、その物置の前には警官が一名も立っていないので、うまく逃げられた形ですよ」
「ナニこの柱から物置へ抜けて、表へ逃げちまったって」
検
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