い》の真似だけは上手な奴じゃ」
「それからまだ分っていることがある……」
 勇少年の饒舌《じょうぜつ》は、まだ続いてゆく。赤星ジュリアは聞き飽きたものかスカートをひるがえして、待たせてあった自動車の方へ歩いていった。
 西一郎の方は、さっきから黙って、青竜王の部下だという大男と少年の話を聞いていたが、これもジュリアの跡を追って、その場を立ち去った。彼はまだ怪人の行方をつきとめたい気があるのかも知れなかった。
 勇少年と大辻とは、それに気づかない様子で、夢中になって饒《しゃべ》りつづけていた。しかし二人の男女が立ち去ってしまうと、思わず顔を見合わせてニッコリと笑った。
「だが勇坊、お前はいけないよ、あんな秘密なことまで喋《しゃべ》ったりして」
「あんなこと秘密でもなんでもありゃしない。僕はもっと面白いことを二つも知っているよ」
「面白いことって?」
「一つは赤星ジュリアの耳飾りのこと、それからもう一つは、いまのもう一人の男の顔にある変な形の日焼《ひや》けのことだよ」
「ほほう。早いところを見たらしいネ。だがそんなことが何の役に立つんだネ」
「それは大辻さんが発見した日記帳以上に役に立つか
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