明けても駄目です。或る仕掛がしてあるので、今夜九時にならないと、文字が出て来ません。今|御覧《ごらん》になっても白紙《はくし》ですよ」
チェッと雁金検事が舌打ちをした途端《とたん》に、相手の受話機がガチャリと掛った。
その日の夕刻、丁度|黄昏《たそがれ》どきのこと、丸ノ内にある化物ビルといわれる廃墟《はいきょ》になっている九階建てのビルディングの、その九階の一室で、前代未聞《ぜんだいみもん》の奇妙な会見が行われていた。
まずその荒れはてた部屋の真中には足の曲った一脚の卓子《テーブル》があり、それを挿《はさ》んで二人の人物が相対《あいたい》していた。
入口に遠い方にいる人物は紛《まぎ》れもなく覆面探偵の青竜王だったが、彼は椅子に腰をかけた儘《まま》、身体を椅子ごと太い麻縄《あさなわ》でグルグルに締められていた。それに対する人物は、卓子を距《へだ》てて立っていたが、その人物は頭の上から黒い布《きれ》をスッポリ被《かぶ》っていた。そして右手には鋭い薄刃《うすば》のナイフを構《かま》えて、イザといえば飛び掛ろうという勢《いきお》いを示していた。――これが雁金検事に報告された青竜王と吸血
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