しょう。院長から許しが出るまで、一歩も寝台の上から降りないことですネ」
「ええ、貴方が仰有《おっしゃ》ることなら、あたくし何でも守りますわ。……ねえ、西さん」
「なんです、千鳥さん」
「あたくし、貴下《あなた》に、どんなにか感謝していますのよ。お分りになって……」
「感謝?――僕は何にもしませんよ。ああ、助けられたことですか。あれなら青竜王に感謝して下さい。……イヤ、そんなことを今考えるのは身体に障《さわ》りますよ。何ごとも暫《しばら》くは忘れていることです。誰かが聞いても、何にも喋《しゃべ》ってはいけません。千鳥さんは当分、生《い》ける屍《しかばね》になっていなくちゃいけないんですよ、いいですか」
「生ける屍――貴下の仰有ることなら、屍になっていますわ」
といってニッコリ微笑んだが、攫《さら》われた千鳥は一体何を感謝しているのだろう。
覆面探偵の危難《きなん》
矢走千鳥《やばせちどり》の誘拐事件《ゆうかいじけん》は、なんの手懸《てがか》りもなく、それから一日過ぎた。
雁金検事はそのことで、大江山捜査課長を検事局の一室に招いた。
「君の怠慢にますます感謝するよ。いよ
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