ている筈の覆面探偵の仕業か。――一方、矢走千鳥は天に駆《か》けたか地に潜《もぐ》ったか、杳《よう》として消息が入らなかった。
 だが、矢走千鳥は無事に生きていた。彼女は多摩川《たまがわ》を眼下《がんか》に見下ろす、某病院の隔離病室《かくりびょうしつ》のベッドの上で、院長の手厚い介抱《かいほう》をうけていた。
「もう大丈夫です。静かにしていれば、二三日で癒《なお》ります。身体にはどこにも傷がついていません。ただ駭《おどろ》きが大きかったので、すこし心臓が弱っています。あまり昂奮しないのがよろしい」
「あたくし、誰かに逢いたいのですが」
「イヤ尤《もっと》もです。そのうち誰方《どなた》か見えましょう」
 そんな会話が繰返《くりかえ》されているうちに、夜更《よふ》けとなった。このとき病院の玄関に、一人の男が訪れた。院長の許可が出て、上へあげられた彼は、矢走千鳥の病室に通った。
「まあ、西さん。――よく来て下すったのネ」
 西はただニコニコ笑うだけだった。
「誰も来て下さらないので、悲しんでいたところですわ」
「僕は、ソノ青竜王から行って来るように頼まれたんです。当分|外《ほか》に誰も来ないで
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