を停め、ジュリアを抱き起すと、彼女は失心《しっしん》からやっと気がついた。
「どうしたのです。そして千鳥さんは……」
「ああ、千《ち》いちゃんは、……」とジュリアは白い腕を頭の方にあげて何か考えているようだったが、
「――誰かが攫《さら》って……」といって入口の方を指《ゆびさ》したと思うと、ガックリと頭を垂《た》れた。ジュリアはまた失心してしまったのだった。
「ナニ、千鳥さんは攫われたというのか」
課長はジュリアを検事に預けて、自分は浴室を飛びだした。見ると正面の窓硝子が上に開いて、しかも硝子が壊《こわ》れている。さっきの酷《ひど》い音はこれだったのだ。怪人物は千鳥を奪って、此処《ここ》から逃げたのに違いない。
彼はヒラリと窓を飛び越して、外へ出た。
そしてあたりを見廻わしたが、クラブの囲《かこ》いの外は、茫々《ぼうぼう》たる草原が見えるばかりで、怪人物の姿は何処にも見えなかった。ただ遥《はる》か向うを、濛々《もうもう》たる砂塵《さじん》が移動してゆくのが目に入った。
「ああ、あれだッ。自動車で逃げたナ」
彼は玄関に廻ってみると、そこで連《つ》れて来た運転手とバッタリ出会った。
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