れなくなって、横須賀軍港《よこすかぐんこう》へ引移ることに決定した。多分、その日の夜に入《い》ると、北上《ほくじょう》してきた赤軍《せきぐん》は、勢いに乗じて、大挙《たいきょ》土佐湾の夜襲戦《やしゅうせん》を展開することだろうと、想像された。その時刻までに、わが青軍の主力は、前夜《ぜんや》魚雷《ぎょらい》に見舞われて速力が半分に墜《お》ちた元の旗艦《きかん》『釧路《くしろ》』を掩護《えんご》して、うまく逃げ落ちねばならなかった。それには日没前《にちぼつぜん》まで、航空母艦『黄鷲』を中心とする航空戦隊が、赤軍の出てくる鼻先を、なんとかして喰《く》い留《と》めねばならなかったのだった。
儂達《わしたち》の戦闘第十三戦隊の三機は、幾度《いくたび》となく母艦《ぼかん》の滑走甲板《かっそうかんぱん》から、空中へ急角度に舞いあがって、敵機とわたり合い、軽巡《けいじゅん》の戦隊を脅《おびや》かした。儂達の戦隊の活躍は、自分でいうのは少しおかしいが、実に目覚《めざ》ましいものだったよ。殊に僚機の第二号機に竹花《たけはな》中尉、第三号機には熊内《くまうち》中尉が単身《たんしん》乗りこんでいたが、その水
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