ストラリア全土を博士に捧《ささ》げてもよいと申して居りますぞ。どうぞその代り、博士が今お手持ちの発明兵器で、世界一なるものを余にお譲りねがいたい。そこに大英帝国の最後の機会がぶら下《さが》って居るというわけでしてな、どうぞ御同情を賜《たまわ》りたい。いかがですな、目下お手持の発明兵器で世界一と思召《おぼしめ》すものは……」
「ふむ、ふむ、ふむ」
博士は、猫が魚のあらと取組んでいるように只《ただ》呻《うな》るばかりである。カンガルーの燻製が、悉《ことごと》く博士の胃袋に収《おさま》るまでは、まず何にも言わないつもりらしい。
こんなわけで、早いところ餌をもって押掛けたチーア卿の早業《はやわざ》は、街頭を血眼《ちまなこ》になって金博士の姿を探し求めているルーズベルトの男女特使を、今も尚《なお》失望させている。
「まだ現れんね」
「どうしたんでしょうか。居ないわけはないんですけれどね」
地下二百尺の金博士の部屋では、今や博士は大きな逆吃《しゃっくり》をたて始めた。
「ひっく。ひっく。ああ、うまかった。久しぶりじゃったからのう。ひっく、ひっく。どりゃすこし睡るとしよう」
遠慮を知らぬ金博
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