、直ちに電報をうって、「共軛回転弾を持ちて帰国する」旨《むね》を大統領に報《しら》せるやら、輸送機を呼びよせるやら、俄《にわか》に中国大陸|土産《みやげ》を掻《か》き集めるやらで、こま鼠《ねずみ》のようにきりきり舞いをしていたが、それでも一時間後には、ちゃんと輸送機上の人となっていた。もちろん共軛回転弾の箱は、機上に大事に保管されていた。
 大陸を出発。成層圏まで一気に上昇して、逆流をついて東へ飛行をつづけ、予定のとおりワシントンへ凱旋《がいせん》したのであった。
 それから後の話は、むしろ金博士の部屋に於て描写するのがよいであろう。
 金博士は、珍らしく新聞を読んでいる。その翌日の夕刊紙だった。
 新聞の上段ぶっとおしの特初号活字《とくしょごうかつじ》の白ぬきで伝える大事件の特報……
“ワシントン、一夜のうちに崩壊《ほうかい》す――白堊館最初に犠牲《ぎせい》となる。危機一髪、ル大統領、身を以て遁《のが》れる。崩壊事件の真相全く不明”
“ワシントン崩壊事件の原因は、不可視怪戦車か。――崩壊は引続き蔓延中《まんえんちゅう》――軍需工場地帯を南進中”
“被害|遂《つい》にニューヨーク市に波
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